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「東京2020オリンピック SIDE:A」レビュー

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先日、映画「東京2020オリンピック SIDE:A」を観てきました。この作品は東京2020オリンピックの公式映画です。2部構成となっており、今回は「SIDE:A」主にアスリートに焦点を当てた作品です。既にいろんな評価もされている作品ですが、自分なりにレビューしていきます。

https://tokyo2020-officialfilm.jp/

異例のオリンピック

皆さんご承知のとおり東京2020オリンピックはコロナ禍の影響により、当初予定していた2020年7月の開催が1年延期となり、2021年7月の開催となりました。また、残念ながらほぼ全ての会場で無観客の開催となり、まさにこれまで誰も経験したことがない異例のオリンピックでした。

この映画は、そんな異例づくしのオリンピックを、SIDE:Aではアスリートの視点で、SIDE:Bではオリンピックを取り巻く様々な人たちの視点で、あのオリンピックとは何だったのかをドキュメンタリータッチで紹介する映画です。

1人の人間として

オリンピックの公式フィルムとして、さぞオリンピックムーブメント礼賛の映画なんだろうと思われている方も多くいるかと思いますが、それはだいぶ違います。では、スポーツ、アスリートの躍動感を存分に堪能できる映画かかと言えば、それもまた違います。

今回のSIDE:Aでは、オリンピックという大会に向き合っている様々なアスリートのバックグラウンド、また、それに伴う葛藤を描いています。アスリートと言っても1人の人間であり、オリンピックが全てではないという視点に立って、1人の人間としてオリンピックと向き合うアスリートを描いた作品となっています。

また、女性監督であることからも、女性アスリートの視点が多めです。7〜8割は女性アスリートだった気がしますね。「男性が注目されがちなスポーツ界において、オリンピックは男女平等に注目される大会である」正確な言葉は覚えていませんが、そのような趣旨の発言も紹介されていました。

今は多くのスポーツで女性にも門戸は開かれています。そのため、女性の躍進(単に男性に並ぶだけなんだけど)にフォーカスが当たることは必然だとは思います。が、個人的には少し女性視点に寄りすぎている気はしました。まぁ、女性監督だから仕方ないかもしれませんし、男性監督なら逆かもしれないわけで、問題があると思っているわけではないです。さもありなん、とは思います。

エンタメ要素はありません

娯楽としての映画、そんな思いでこの映画を見ると退屈に思うのは当然かもしれません。この作品は、エンターテイメントよりも、あくまで実際の選手の内面や、彼ら、彼女ら取り巻く環境をドキュメンタリーとして収録した作品であり、ハリウッド映画などのような娯楽要素を期待して行くのは誤りです。

冒頭書いたとおり、あのオリンピックとはいったんなんだったのかを問う作品なので、スポーツに興味がない人はもちろん、上述の問いについて多少でも意識がある人じゃないと「つまらない」としか感じないと思いますので、観ないことをお勧めします。

特に、東京2020オリンピック開催前、開催期間中を通して、開催反対、あるいは、中止を望んでいた方は、観るべきではないです。当時の思いなどが甦るだけで、何も生み出さないと思いますので。

欧米中心の新しい価値観

この作品は、欧米の中での新しい価値観を紹介する作品であるとは思いました。オリピックは基本的に国を代表しての参加にはなりますが、国を代表してというところを意図的に下げて、個人をより上げる構成にしていると感じます。イランの柔道選手の亡命、何度か代表する国家が変わりつつも参加しているウズベキスタンの体操選手、国家を背負う、決められたルールに従うことよりも、個人の思いや生き方を優先する、そんな選手の背景や価値観をある意味礼賛しているように感じました。

また、新しい価値観というのはオリンピックで扱うスポーツの多様化にも焦点が当てられていたかと思います。スケートボードやサーフィンなどはその典型でしょう。新しい時代のオリンピックとして、いわゆるストリートスポーツ、アーバンスポーツなんてものは格好の宣伝材料です。近い将来、最近話題のeスポーツなどもオリンピック種目になる日があるかもしれませんね。

個人的には、欧米の価値観に近い日本という社会で育った身として、描かれた価値観にさほど違和感は感じませんでした。ただ、そのために幾つかの国家を貶めている描き方もされており、事実としても異論は出ているだろうとは思います。特にイラン。

また、日本への配慮と日本らしさを表現するために柔道という素材を使ってますね。日本で行われたオリンピックですし、ここは外せなかったんだろうと思います。全体のメッセージが「新しい価値観」だとすると、柔道部分のみ若干の違和感を感じました。

ボランティアスタッフとして感じたこと

今回のオリンピックですが、私はボランティアスタッフとして参加していました。スポーツを愛する者として、IOCの総会で東京開催が決まったときからどんな形でも参加したいと思っていましたし、幸運にも微力ながら参加することができ、大会期間中はバスケットボール会場で10日間活動しています。

なので、作品の中で女子バスケットボールが扱われ、特に日本女子の活躍が描かれていたことは、現地で実際に試合を観ていたし、会場の雰囲気、座席の配置、流れてくるBGMやDJの声など、懐かしさを感じました。まだ1年しか経っていないのに、なんだかだいぶ前の出来事のような気がします。

でも、そこで感じたことはまだ鮮明に覚えていますね。無観客でなかったら何倍も素晴らしい空間になっていただろうということ、男女共に表彰式で感じた身が引き締まるような空気、おそらく生きている間に自国開催はもうないでしょうし、今回のような異例のオリンピックを経験するなんて今後はないだろうから、とても貴重な体験をさせてもらったと思っています。

ただ、大会前はやはり不安みたいなものは感じていました。自分はオリンピックという大会が全く問題がないとは言わないものの、素晴らしい祭典だと思っています。なので、コロナ禍という状況があったにしても、反対や中止の議論があること自体に悶々とした感情を覚えていました。コロナ禍の現状を考えれば中止も仕方ないのかもしれないとも思っていましたが、なんとか状況が改善してほしいと思ってました。

なので、個人的には非アスリートの視点で描かれる「SIDE:B」のほうが興味があったりします。1ボランティアスタッフ程度ですが、微力ながら実際に参加をさせてもらった身として、ある意味総括とも言えるこの作品を「SIDE:A」「SIDE:B」ともに観て、大きなことを言わせてもらえれば世界や日本にとって今回のオリンピックとはなんだったのか、何を残したのか、また、自分にとってもそれはどうだったのか。改めて考えてみたいと思っています。

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